化女沼レジャーランド 旅行・観光ガイド ブログ
観覧車・メリーゴーランド・ゲートボール場・お姫館
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化女沼ゲートボール場
ゲートボール場は、化女沼パークホテルの向かいにあります。配布された当時の園内マップによると、「化女沼ゲートボール場」あるいは「化女沼室内ゲートボール場」と呼ぶようです。
ゲートボール場は、全天候型で、2面分のコートが確保できる大規模な施設でした。起伏のある土地のため、ホテルが建つ地表面からは一段下がった位置にあります。このため、ホテル前の入り口からは階段を下っていく必要があります。
ゲートボール場との高低差が意外とあり、長い階段を下りていきます。ゲートボールを楽しむような高齢者が、この急な階段を上り下りしていたとは思えませんが、こちらはホテルとの連絡通路のため、正規の入り口が別にあります。
階段は、草木の侵食を受けていますが、現状は何とか通れます。ただ、金属製の階段は腐食が進んでいて、体重を掛けると抜け落ちてしまいそうな箇所もあるため、注意が必要です。
崖のような落差を下りてきて、ようやくゲートボール場の建物が見えてきました。照明が無いため薄暗いですが、施設の保存状態は良さそうです。
ゲートボール場は、想像していた3倍くらいの広さ。ゲートボール以外の用途が無かったのかと思ってしまうほど、とても広いです。
床面は土で、運動場のような感じ。窓ガラスはもともと入っていなかったようで、吹きさらしのガレージのような建物です。
このくらいの広さがあれば、学校の運動会なども開催できそうです。全天候型で、周囲に民家は無く、騒音の心配もありませんし、非常に贅沢な施設だと思います。
窓の外はジャングルのように草木が生い茂っていて、人間の侵入を拒んでいる状態です。しかし、意外なことに、これだけ大きな開口部があるにも関わらず、ゲートボール場内への植物の侵入はあまり無く、ほぼ当時の状態が守られています。
日が差さない場所なのと、地面が踏み固められているため根を張りづらいことも要因かもしれません。よく見ると、一度侵入したツタが枯れているのがわかります。
この施設を廃墟というとちょっと語弊があるかもしれません。化女沼パークホテルや入り口の売店は、天井が抜け落ちていたりして、建物のダメージが相当ありました。しかし、このゲートボール場は、目立った破損箇所は無く、まだ現役で使えそうな感じがします。
ちょっと気になるのは、コートの地割れでしょうか。コートの土は、後から搬入して整地したものだと思いますが、地震や地盤沈下などによって地割れが起きたのだと思います。地割れが、ホテルとは反対側(恐らく土地が低くなっている側)に集中しているのはやや気になります。
ちなみに、建物を出たところに、別棟でトイレがありました。
お姫館
お姫館は、化女沼に伝わる「照夜姫」にまつわる伝説を紹介し、その霊を慰める施設です。閉園後も、園内で唯一、現役施設として管理が継続されている施設でもあります。
このお姫館、通常は施設内への立ち入りを禁止しているらしく、見学イベントでも公開されないことがありますが、今回は後藤社長立ち会いのもとで、拝観が許可されることになりました。
- お姫館へ続く道を歩いていく。
昔々、化女沼のほとりで暮らしていた姫が、通りがかりの旅人と恋に落ち、子ども(白蛇と表現されている)を身ごもった。相手は旅立ち、姫は悲しみに暮れた。子どもは沼の中へと消えていった。それから毎晩、沼の中から赤ん坊の泣き声が聞こえるようになり、その声に誘われて姫は沼へと身を投じた。
――これが、化女沼に伝わる照夜姫伝説だそうです。現代においても、「姫に引きずり込まれて人が亡くなる」と恐れられているため、慰霊の意味も込めてこのお姫館を建立したそうです。(実際、このお姫館の建設により、以前は時々発生していた溺死事故がゼロになったとのこと)
こうした歴史的な背景から、後藤社長もこの施設を重要視しており、毎日欠かさず祈願や管理のために、このお姫館を訪れているそうです。
- お姫館が見えてきた。
お姫館は、林に囲まれた池か湿地のような場所の中心に鎮座しています。建物へは、木の板でできた橋(?)を渡り、アクセスします。後藤社長が日々通っているため、植物の侵食はほとんど無く、歩きやすい道です。
オーナーと添乗員の案内で、建物の中へ入れてもらいます。
中は意外と広く、照夜姫伝説の解説パネルや立派な装飾品などが展示されていました。
中央にあるのは、照夜姫伝説に登場する姫の像でしょうか。化女沼レジャーランドの他の施設とは違い、豪華絢爛な装飾の数々に驚きました。
供物台には、きれいな花が供えられていましたが、後藤社長が日々のお参りで生けたものでしょうか。照夜姫の霊を鎮めるために、本当に大事に管理しているのだと改めて感じさせられました。
- 金ピカの豪華な装飾品が吊り下がっていた。
- 壁面には、照夜姫伝説を紹介する絵が描かれている。
お姫館の壁には、ぐるりと囲むように絵が描かれていますが、これは照夜姫伝説のストーリーに沿ったものだそうです。説明パネルも充実していますし、化女沼レジャーランドを訪れた客に対して、化女沼に伝わる伝説を丁寧に説明しようとする姿勢が感じられます。
ちなみに、お姫館の裏側には、小さな社殿と鳥居、狛犬を備えた化女沼神社があります。
遊園地
最後に、観覧車などの遊具がある遊園地の方に行ってみます。
途中、植物に覆われた謎の空間がありましたが、園内マップによると、ここにはバンパーボートの池があったようです。すでに草木が繁茂し、池があった痕跡は全く消滅しています。
- 草木で埋もれているが、バンパーボートの池と思われる。
遊園地のエリアは、周囲より若干低くなっていて、平らな土地が広がっています。
他のエリアがそうであったように、ここも雑草が繁茂し、自然に飲み込まれつつあります。ただ、不定期に行われるツアーや、テレビのロケなどで、人の出入りがあるためか、観覧車までの最低限の通路は確保されていました。
後藤社長は、「良い遊具があれば、世界のどこまででも買いに行く」と話していました。化女沼レジャーランドの遊園地エリアには、ヨーロッパやアメリカを飛び回り買い付けた自慢の遊具が揃います。
例えば、子ども用のアスレチック遊具の「ストーランド」。当時は、公園のアスレチックで子どもの死亡事故が話題となり、遊具は危険だと言われていました。後藤社長は、安全性の高い遊具を求め、ドイツのボンまで買い付けに行ったそうです。ストーランドの遊具は、現在も大きな破損無く残っており、改めてその頑丈さを示しています。
このほか、「バンパーボート」のエリアにある水上ボートは、ロサンゼルスで買い付けたものだそうです。
子どもの背丈と同じくらいの草に覆われた遊園地は、ここでしか見られない異様な風景でしょう。草が壁のようになっていて、近くにいる人の姿も隠れてしまうほどでした。
遊園地エリアで最初に目につくのは、草むらの中に佇むメリーゴーランド。後藤社長が海外で買い付けたといわれる、化女沼レジャーランドの名物です。
白馬をはじめ、アヒル、ライオン、ゾウなどといった動物が取り囲んでおり、現役時代は人気アトラクションだったと思われます。
野ざらしにしては保存状態もよく、かといって、ほどほどに朽ちた様子が廃墟マニアの心をくすぐり、現在でも別の意味で人気スポットとなっています。
映画やテレビCMのロケ地としても使われているらしく、廃墟のメリーゴーランドといえば…、と業界でも知られた存在なのかもしれません。
メリーゴーランドの隣にある、輪っかのついた支柱は、空中ブランコだそうです。たぶんぶら下がった椅子に座り、ぐるぐると回転するのでしょう。
- 観覧車の近くにあったのは、回転遊具の「トラバンド」。
回転遊具の「トラバンド」は、かつて全国の遊園地で導入されていた回転アトラクション。今でも、岐阜県の養老ランドなどで現役だそうです。
ゴンドラがぐるぐる回るだけの仕掛けですが、回転するだけでなく、上下の動きもあるため、結構楽しめそう。このトラバンドは、さすがに稼働しませんが、手押しで回転させることは可能みたいです。
- コーヒーカップは錆びてボロボロになっていた。
遊園地の定番、コーヒーカップもあります。ただ、こちらはもう錆びてしまってボロボロです。
アトラクションごとに後藤社長が各国に買い付けているため、耐久性も様々みたいで、長年放置した時に、それが顕在化するのが興味深いです。
日没が近づき、辺りがだんだんと暗くなってきました。
化女沼レジャーランドの象徴的な存在でもある観覧車が、夕日に照らされ、より一層の哀愁を漂わせています。
観覧車は、化女沼レジャーランド内で最も化女沼に寄った位置に設置されていて、現役時には、化女沼の美しい景色を眺められたことでしょう。もちろん現在は、ゴンドラに乗ることはできませんし、観覧車が再び稼働することも無いと思います。
しかし、かつてこの観覧車が観光客で賑わい、あの高い場所から、この一帯の風景を眺めていたと思うと、この観覧車の存在が何十倍にも価値のあるように思えるのです。
小話ですが、化女沼レジャーランドの“一番の敵”は、野鳥マニアだそうです。というのも、化女沼はラムサール条約に指定されており、白鳥や雁などの貴重な野鳥が飛来する場所となっています。野鳥マニアによると、「野鳥が観覧車にぶつかって危険」なため、観覧車を撤去してほしいのだそうです。
以前、招待制の廃墟イベントで、(招待していないはずの)野鳥マニアが敷地内に無断で立ち入り、トラブルになったことがあり、後藤社長とは犬猿の仲となっているとのことです。
廃墟はいずれ朽ちて解体される運命ですが、それでも「この姿のまま残り続けてほしい」と願ってしまう、不思議な魅力が化女沼レジャーランドにはあります。
園内を一通り巡ってみて、ファンを魅了する理由がわかった気がしました。
化女沼レジャーランドのこれから
ツアー参加者から、化女沼レジャーランドに対する今後の思いを聞かれた後藤社長は、盛況だった当時の記憶を語り始めました。
2千人が入る野外ステージが、とにかく子どもに人気だった。例えば、仮面ライダーなどのヒーローショー。あの迫力、熱気をもう一度と思っている。
このため後藤社長は、「野外ステージに全天候のため屋根を付けたい」と語りました。当時の熱気が、今も鮮明な記憶として残っているのでしょう。
「これも、あれもやりたいというのがある。若い頃だったら、まだいろいろやれたんでしょうけど」と話す後藤社長は、まだまだ化女沼でやり残したことが多そうです。この思いを引き継いでもらえる後継者が見つかることを、切に願うばかりです。
- 探索日
- 2016/08/20
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