契島 生きている軍艦島 旅行・観光ガイド ブログ
契島 生きている軍艦島に上陸
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町営フェリー「さざなみ」に乗船
白水港から出ている町営船には、「さざなみ」という愛称が付いています。乗船券の販売は無く、乗船時、船員さんに行き先を告げて、運賃を手渡しします。
今回は、いったん契島に上陸後、すぐに引き返して、生野島で下船するという予定だったので、白水~契島の290円と、契島~生野島の180円で合計470円を支払いました。
この便では、私以外に乗船客はいませんでした。白水港から契島までは、片道290円。さほど距離が無いとはいえ、ほとんど客を乗せずに、船が一往復するわけなので、これでいいんだろうかと疑問に思う値段です。
船室は、一階と二階があり、屋外デッキもあります。ちょっとしたリゾート気分ですが、乗客が自分だけなので、いまいち落ち着きません。
町営船「さざなみ」は、白水港を出ると、生野島、契島の順に停泊し、折り返して、再び生野島に寄港して白水港へ戻ります。つまり、生野島には一度の航海で二度寄港することになります。
だだっ広い車両甲板の隅っこに、自転車をちょこんと駐輪しましたが、やはり落ち着きません。別に誰も乗っていないので、ど真ん中に置いてもいいんですけどね(笑)。
町営船は、定刻通りに生野島に寄港しました。しかし、当然ながら乗船客は無く、契島に向けてすぐに出港しました。
景色を見ていると、船員に声を掛けられました。「この辺りには、“すなめり”がいるんだよ。さがしてごらん」とのこと。「すなめり」というのは、イルカのような生き物なのだそうです。
写真に収めることはできませんでしたが、フェリーの近くで泳ぐすなめりの姿を2頭確認できました。海面すれすれを泳いでいたため、グレーのイルカっぽい姿が見えました。
契島に接近
契島が見えてきました。
島内は、東邦亜鉛の契島精錬所となっていて、日本の鉛の40%以上がこの島で精錬されていると言われています。鉛は主に、自動車のバッテリーに使われているそうです。
契島精錬所は、24時間稼働していて、約250人が常時働いています。
契島は、元々南北2つの島から成り立っていましたが、工場建設に伴って埋め立てられ、現在の地形になったそうです。
明治32年(1899年)に精錬所として操業を始めて以降、経営者が変わりながらも、100年以上に渡って稼働し続けています。
当初は、銅の精錬が主でしたが、昭和15年(1940年)に鉛の精錬に切り替えました。その後、金・銀や濃硫酸など、様々な金属・化学薬品に手を広げています。
島の中央部に建つ美しい煙突は、契島のシンボルとなっています。煙突が建つ場所は溶鉱工場となっていて、契島の中心的な施設の一つです。亜鉛の精錬工場は、この煙突を含む島の中央部から南側にかけて立地しています。
島の南側には、電解工場や物流センターがあります。狭い島ですが、大型クレーン車やトラックが駐まっていました。島の南端には、わずかながら樹木もありますね。
契島に近付いて見てみると、建物の一部は海にはみ出して建てられていることが分かります。わずかな土地を有効に使うための工夫なのでしょうか。
島の東側には、荷揚げ用のガントリークレーンなどがあります。港湾設備は貧弱ですが、船を接岸しなくても積み卸しができるように工夫されているようです。
町営船は、契島の東側を航行しますが、船からは見えない島の西側には、硫酸工場があります。そもそも、なぜ契島で硫酸を精製しているのかというと、亜鉛の精錬過程で発生する排ガスに硫酸が含まれるからです。脱硫装置によって排ガスを無害化するとともに、取り出した成分から硫酸を精製して一石二鳥としているわけです。
工場の建屋が幾重にも重なっている様子は、まさに芸術作品のようです。海に張り出した鉄骨も、良い味を出しています。
ちょうど島の東側に、第十五契丸が停泊していました。第十五契丸は、契島運輸(東邦亜鉛の子会社)が保有する18トンの貨物船です。
ちなみに、工場で埋め尽くされているように見える契島ですが、島の北側には2階建ての社宅群があり、居住も可能だそうです。さらに、共同浴場や遊具施設もあるらしく、工員だけでなく、その家族も住みやすい環境が整っています。
生活する上での食料品や日用雑貨は、守衛所の近くにある売店で買うことができます。ここには自動販売機と休憩所もあるそうです。しかし、売店は平日のみ営業するため、生活は便利とはいえないでしょう。
まもなく契島港が見えてきました。契島港では、社用船の「とうほう」が出港を待っているところでした。
契島に上陸
生野島から20分ほどで、契島の玄関口、契島港に到着しました。桟橋では、10人ほどが、この船の到着を待っていました。
前述の通り、東邦亜鉛の関係者以外は上陸ができないため、私はここで引き返すしかありません。しかし、桟橋の立ち入りは認められているため、桟橋での撮影を試みます。
町営船の船員さんは、「桟橋で撮影したいので、少しだけ出港を待っていて欲しい」という私の無理なお願いを聞き入れてくれました。本当にありがとうございます。
いよいよ契島(の桟橋)に上陸です。
見た目は、まさに工場の入口という感じ。この風景だけ見た人は、ここが離島だとは思わないでしょう。
「東邦亜鉛」の大きな看板がある左手の建物が守衛所のようです。売店や休憩所もあの建物内にあるのでしょうか。一般的な工場とは違い、立ち入りを制限するゲートはありません。
ちなみに、非公式ですが、かつては交渉次第で一般の見学者も受け入れていたようです。島の西側には遊歩道があるらしく、そこを歩けば、危険な場所を避けて契島散策をすることが可能なのだとか。
- 旅客用と思われる小型船が停泊していた。
最後に、振り返って町営船「さざなみ」と船員さんをパチリ。波が立たない瀬戸内海では、船を繋留せずにランプを掛けるだけで接岸しちゃうんですね。町営船「さざなみ」は、ここで折り返して、再び生野島へ向かいます。
契島は、離島・工場マニアにはよく知られた存在ですが、近年、長崎県の端島とともに人気となり、マニアが島内に無断で立ち入るケースが増えているそうです。守衛所はありますが、人が常駐していないため、実は意外と簡単に侵入できてしまうのだとか。
契島精錬所では、硫酸の精製も行われています。工員は、防毒用のマスクを装備して身を守っていますが、部外者が何も知らずに立ち入れば、死と隣り合わせです。そうした場所に立ち入ることは、工員に迷惑を掛けるだけでなく、自身を危険にさらすことでもあるのです。
- 探索日
- 2013/09/07
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