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J-PARC施設公開で巨大実験施設を見てきた
J-PARC施設公開で巨大実験施設を見てきた
原発をはじめとした原子力関連施設が集中する茨城県東海村に「J-PARC」という施設があります。最先端の科学研究に貢献している施設のようですが、我々一般人にはあまり馴染みのない施設です。今回、J-PARCの施設公開が4年ぶりに開催されるということで、見に行ってきました。
常磐線の東海駅で下車し、近くにある日本原子力研究開発機構で受付を行い、バスで施設へ向かいます。東海村は、原子力の交付金で潤っているため、駅舎や駅周辺は、村とは思えないほど立派に整備されていました。
原子力施設ということで、身分証明書は必須。J-PARCに隣接する日本原子力研究開発機構の東海研究所内は、多数の原子炉を有するため、撮影禁止でした。
ちなみにJ-PARCでは、毎年メンテナンスのため運転を停止する夏場に合わせて施設公開を行ってきました。ところが、2013年に放射性物質が漏れる事故があり、去年まで施設公開を中止していた経緯があります。そういう意味でも、今回の公開日は注目を集めていたようです。
改めて、J-PARCとはどういう施設なのかという話ですが、文系な私ではさっぱり理解できませんでした。ざっくりとした説明ですが、陽子を光の速さまで加速させ、鉛や水銀などのターゲットに衝突させるための巨大な装置(大強度陽子加速研究施設)です。衝突させた時に発生する中性子やミュオンといった粒子が研究上とっても大事なのだそうです。
加速装置は、地下に埋設された環状のトンネルが重要な意味を持ちます。トンネル内でぐるぐるとビームを回し、次第に速度を上げていき、必要な速さに達したタイミングで、「ハドロン実験施設」という施設に向けて、ビームを衝突させます。
施設全体が放射線発生装置のため、厳重な警備と線量モニタリングが行われています。地下トンネルの入口は、強固な鉄格子で覆われていて、いざという時の防護服や線量計なども配備されていました。
J-PARCでは、長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)という実験も行われています。J-PARCで人工的に生成したニュートリノビームを295km離れた岐阜県のスーパーカミオカンデに向けて放ち、カミオカンデ側で観測するという実験です。ニュートリノは物質を通過するため、地中の岩盤に対してビームを撃っても、離れた場所で観測することが可能なのだそうです。なんとも不思議な理屈です…。
施設公開では、カミオカンデに向けてビームを放つ装置も公開されていました。この300km先まで、地中をすり抜けてニュートリノが届くというのが不思議ですね。
地下に並ぶ細長い装置は、陽子ビームを通す巨大な電磁石です。
「ハドロン実験施設」は、陽子ビームを衝突させる実験場です。放射線が発生するため、コンクリートブロックが積み上げられています。2013年の漏洩事故では、この施設において、放射性同位体が漏洩し、研究者や作業員が被爆しました(ただし、健康に影響の出る被曝量ではなかった)。
J-PARCの各施設を巡り説明を聞いて、敷地全体が一つの巨大な装置として造られていることがようやく理解できました。科学実験のために、ここまで壮大な施設を建設する熱意とスケールの大きさに驚かされました。
- 投稿日時
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2016年07月31日
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